狂犬病予防法が制定される1950年以前、日本国内では多くの犬が狂犬病と診断され、ヒトも狂犬病に感染し死亡していました。このような状況のなか狂犬病予防法が施行され、犬の登録、予防注射、野犬等の抑留が徹底されるようになり、わずか7年という短期間のうちに狂犬病を撲滅するに至りました。この事例を見ても、犬の登録や予防注射が狂犬病予防にいかに重要な役割を果たすかが理解できます。

現在、日本では、犬などを含めて狂犬病の発生はありません。しかし狂犬病は、日本の周辺国を含む世界のほとんどの地域で依然として発生しており、日本は常に侵入の脅威に晒されていることから、万一の侵入に備えた対策が重要となっています。

万一狂犬病が国内で発生した場合には、素早くしっかりと発生の拡大とまん延の防止を図ることが非常に重要となります。そのためには、犬の飼い主一人一人が狂犬病に関して正しい知識を持ち、飼い犬の登録と予防注射を確実に行うことが必要であり、そうすることによって公衆衛生の向上と公共の福祉の増進に寄与しているということを飼い主の方にはしっかりと自覚していただくことが望まれます。

狂犬病って?
狂犬病は、狂犬病ウイルスの感染による人と動物の共通感染症です。すべての哺乳類が感染し、人が感染し発症した場合呼吸障害などにより100%死亡します。
狂犬病は、世界各国において発生がみられ、毎年3 ~ 5 万人の死亡例が報告されています。人の発生の感染源の多くは、狂犬病に感染した犬やコウモリ等の動物による咬傷事故(感染動物の唾液にウイルスが含まれます。)が原因とされ、犬をはじめとする動物に対する不断の予防対策が重要です。
日本は現在、例外的な清浄国ですがアジア諸国においては、インド、東南アジア諸国をはじめ、中国、韓国においても発生しており、中国の最近の犬飼育の普及等のペットブームを背景に狂犬病がまん延し、毎年2,000 人から3,000 人規模の死亡者(感染症による死亡報告数は結核に次ぐ第2 位)が報告され、大きな社会問題となっています。

近年、人と物の国際交流、グローバル化が進展する中、狂犬病の侵入の機会は増大しており、一方、犬、猫等の家庭動物の飼育が普及し、家庭生活の伴侶として広く受け入れられてきている中、人と動物の共通感染症のなかでも最も注意を要する狂犬病に対する危機管理の不断の備えが重要であります。
日本のような狂犬病清浄国において実行すべき対策として重要なのは、海外からの感染動物の侵入防止を図るための輸入検疫とともに、国内対策として国内飼育動物の発生予防対策を徹底することにより、狂犬病侵入時のまん延防止に備えることにあります。しかしながら、「輸入検疫」については、犬に加え、猫、あらいぐま、スカンク、きつねが狂犬病の検疫対象動物に追加されましたが、依然として検疫対象は一部の動物であり、また、げっ歯類動物を中心とした野生動物対策が未整備であること、外国船舶に搭載された犬の不法上陸事例が頻発する等、現状の輸入検疫による侵入防止には、自ずと限度があります。一方、「発生予防対策」については、家庭動物としての犬の飼育頭数が順次増加する中、飼育犬の全数把握としての登録と定期予防注射は、いずれも周知・徹底されておらず、登録率は5割水準、定期予防注射の実施率は、実に4 割を下回る低水準にあると見込まれます。狂犬病の予防対策において、予防注射を実施し免疫を付与することにより流行を防止するためには、WHO ガイドラインでは、少なくとも70 %以上の免疫水準を常時確保する必要があるとされています。狂犬病予防法においては、犬の飼い主に対して「犬の登録」を行うことと毎年の「定期予防注射」を受けることを義務付けています。犬による咬傷事故は毎年、届出だけでも6,000 件以上が報告されています。万一の侵入事態になった場合、現行の予防注射の実施率では社会パニックを引き起こしかねません。犬の飼育者自身が愛犬を守ること。そのことが人の命を守り、社会を守ることにつながります。

東京都獣医師会
夜間診療ネットワーク
江東区役所ホームページ
江東区の動物病院 東京都獣医師会江東支部
公益社団法人 東京都獣医師会 江東支部
©2015 公益社団法人 東京都獣医師会 江東支部. All Rights Reserved.